時は近未来。
ハンカ・ロボティクスによる全身義体化第一号ミラ・キリアン少佐はサイバー犯罪やテロリズムに対抗する公安九課に所属している。
しかし、芸者ロボを使ったテロ事件に単独で突入したとき、クゼと呼ばれるテロリストからハンカに対する警告を受け取った。
少佐とは何者なのか。時折視界に紛れ込む映像は何か。ハンカ・ロボティクスのプロジェクト2571とは何なのか。
これは少佐が少佐となる物語。
攻殻機動隊は製作が難しい作品だと思う。
日本の他の作品で言うとヤマトやガンダム、アメリカで言えばスターウォーズやスタートレックに匹敵するほど「声高なマニアが無駄にうるさく騒ぎ立てる」シリーズだろうからだ。
この実写版がこれまでの作品と違うところは、少佐の成長譚という点と、主人公が草薙素子を名乗ってない点だろう。
素子名義に関してはちょっと横へ置くとしても、成長譚にすることはやむなしだろう。ここから攻殻機動隊に触れる人たちにはよりとっつきやすくなるはずだし、飲み込んでみてしまえばかなりいい出来の映画だと思う。
その上で見ていけば端々に出てくる過去作品への敬意あるオマージュに驚くこと請け合いだ。
冒頭数分で出てくる街の広告にまぎれて、あのフォントそのままの『イノセンス』ロゴが出てくるのには驚いた。ある意味一番攻殻らしくないイノセンスの、だ。
犯人役には2ndGIGからクゼの名前と関係性を引っ張ってきつつも事件の端々には人形遣い事件の影が見える。
ゴミ収集車の作業員にニセ記憶埋め込んでテロに巻き込む所や、二種類の光学迷彩を描き分けるために水面での格闘戦を仕掛けたりするのも知っていればニヤリとするシーンだろう。
少佐が女性を買うところまでしっかり描くのも驚いた。
プロップガンがあったのかもしれないけど、ワンシーンしかはっきりと描かれないのにきっちり出てきたトグサのマテバにはしっかりサムアップさせてもらいました。
シメが狙撃というのもまた『わかってる』感たっぷり。
ただし、文句は少なからず言いたい。
序盤のバトーが裸眼であったり、少佐の名義が草薙素子ではないなどの改変もある。
映画の尺に収めるために各メンバーのスキルにも個人描写にも踏み込めない。描写が難しい上に派手さに欠けるからか情報戦がほぼ削られたのも微妙に攻殻らしさを削ぐ。電脳戦もあまり描かれないので電脳化の利点はどこへやら。
その上で描写が足りなくなることが分かっているはずなのに、なぜか公安九課にしれっと新メンバーが加わっている。人権団体の絡みで有色人女性枠が必要だから加えたのは(わかりたくもないが)わかるけど、本当に加わっているだけでめぼしい活躍はない。というか九課ではっきり活躍が描かれるのは少佐とバトーと課長くらいなのになぜ人員を増やしたのかよくわからない。何より荒巻課長から感じるアウトレイジ感。あんな武闘派だったっけ?
シナリオそのものは悪くないんだが、ツッコミどころが結構出てくるのだ。街並みがどことなく中国風だってのは些細な事。
な? ここでも「声高なマニアが無駄にうるさく騒ぎ立て」てるだろ?(苦笑)
それでも製作したことは評価したい。うちでも羅列したように、どう作ったってマニアは重箱の隅から自分の趣味に合わない箇所をほじくり出して「ここが違う!」とわめく豪の深い生き物なのだ。これだけの出来の攻殻機動隊を作ったのなら少々のイチャモンは自然発生すると聞き流していただけると幸いである。何より私は文句を書き連ねつつも十分な出来に満足したのだから。
最後に、主役スカーレット・ヨハンソンに対するあれやこれやに対する自分なりの意見。
人種のるつぼと化したあの街に、黒髪にした白人女性という少佐のビジュアルは十分にエキゾティックで映えるように見えたし、個人的にはアリだと思う。
原作の草薙素子自体がまず本名かどうかあやしい上に、外見ですら本人のものを再現しているとは限らない。他の作品だと本人があの外見を草薙素子のアバターとして使ってる感じもあったりするわけで。
映画での少佐の正体云々は横に置いとくとしても、あのビジュアルは少佐の外見のバリエーションの一つと考えれば納得できるかと。
そんな些末事より、個人的にはスカーレット・ヨハンソンの首とあごが前に出た人間的な歩き格好が義体らしくなく見えて気になった。ロボットのパントマイムやれとまでは言わないけど、非人間的なほどきれいに歩く方がよほど義体風に見えるかなあと。
その上で、草薙素子の名前の使い方はもったいないの一言に尽きる。これ以上ネタバレにつき自粛。
追記。
CGで車両まで作り出してる本作ではあるが一部どう見ても実車なシーンがあった。
荒巻課長が襲撃されてアウトレイジリベンジかますシーンなんだけど、課長と一緒に撃たれるのはZ31でそのバックには初代アルシオーネが鎮座ましましている。
何でこう……リキ入れるところをっ……!
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