彼は愛する女性とともに過ごすために、五年前、仕事を替えた。
彼は、その女性に心配されるほどスポーツカーに愛着を持っていた。
その女性が病魔に倒れ、彼がスポーツカーに傾倒することを心配した女性は、最期に子犬を送った。
彼は、その子犬とともに生きようと思った。
ロシアンマフィアのドラ息子に目をつけられたスポーツカーごと、子犬の命を奪われるまでは。
彼は全てを失った。
彼の名はジョン・ウィック。
五年前に引退した、殺し屋を狩る最強の殺し屋だ。
「誰もが『復活か?』と聞く。ああ、戻ってきたぜ!」
全てを失った殺し屋の復讐劇が始まる。
ああそうだ。戻ってきたな。
こんなキアヌ・リーブスを待ってた!!
キアヌ・リーブスが使うのは『ガンフー』と呼べる銃を伴う格闘技である。
ちょっと鼻の利く映画好きならリベリオンの『ガン=カタ』を思い出すだろう。
だがガン=カタが近接戦闘に二丁拳銃を持ち込むための手段だったのに対して、ガンフーは銃撃戦に格闘を組み込むという感覚である。
左手を重ねるように乗せた右手で、顔の前で拳銃を握る『Center Axis Rerock SYSTEM』というi接近戦向けの持ち方を行う。分かりづらければゲンドウポーズの右手に銃を握ると考えればいい。
方向転換のときにも銃を振り回す必要がなく、狭い場所でも素早い行動が可能になる。左右へのターゲットチェンジでは方向転換すらしなくてもいい。両手の中で銃を持ち帰れば済む。
一対多の戦闘においては、まず一番近い(不幸な)ターゲットに肉薄し、体術で制圧し無力化する。近付くのが困難なら一発撃ち込んでから接近する。音に気付いた他のターゲットが対応を考える間に二発以上打ち込んで仕留め、改めて制圧しているターゲットに弾丸をぶち込むのだ。
弾丸が尽きたら? リロードは体術で無力化しているうちに行えばいい。
画面に映えるカートのばらまきもやらない。無駄な二丁拳銃もやらない。それでも壁越しの射撃を察して回避と反撃かましたり、バック全開で跳ね飛ばした敵が車の屋根の転がるときにアサルトライフルで追撃してたりする。
地味なんだが、荒唐無稽だ。
過去とスポーツカーへの愛着を言葉なく綴り、失った妻への思いも描く。
引退したはずの『仕事』も半ば望んで、半ば強制的に復帰させられる。何より白眉なのは「復讐するは我にあり」を双方ともに通そうとして通せてしまう不条理である。
ズタボロになったジョン・ウィックが、日常へ戻ろうとするシーンが最後にある。
もう取り戻せない日常。欲しても戻らない日常。それでも戻りたかったんだ。
映画を見て損をするかって? アクション映画が好きなら見ない方が損をすると思うね。
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