2016年12月25日日曜日

【映画感想】この世界の片隅に

見終わって数日経つのだが、いまだにあの衝撃が頭から離れない。
『ジャック・リーチャー』と『君の名は』を差し置いて先に感想を書いてしまおう。


昭和初期の日本。
ちょっとした縁で広島から呉に嫁いだすずさんが、慣れぬ結婚生活をゆるゆるとこなしていく中で大戦に翻弄されていく姿を描く。


戦争を題材にしたこの映画は、その上で一方的な戦争非難にも戦争賛美のどちらにも偏らない稀有な作品である。
海軍のお膝元である呉に住む嫁ぎ先の北条家は、軍と無縁の生活をしているわけではない。それでも武官と生活しているわけでもない微妙な軍との距離感がいいバランスを生んでいると思う。

戦前から戦中、そして終戦に向け物資がなくなっていく様子はしっかり描かれているものの、度を越した悲壮感はない。食料がなくなっていくことは確かなのだが、場面に応じた知恵で乗り越えていく姿が生き生きと描かれている。そして時折乗り越えそこねるのが緊張感をほぐしてくれるのだ。

そう。この映画、意外と笑えるのだ。特にほんわかしたすずさんが繰り出す全力でのドジは、本人が反省することと当事者であることに加え、あの「ありゃあ~~~~」とつぶやきながらの照れ笑いでどうしても許してしまう。
楠公飯の下りとかかなり好きである。見た人は分かってもらえると思う。ねぇ?(笑)


時折描写されるすずさんの描く絵もまた重要なポイントだ。絵がもたらす楽しさは十分に、一見深刻そうな問題は意外とコミカルに描かれる。立地や北条家の仕事による海軍ひいきはあれど、陸軍はコメディリリーフ扱いになるほかない。
絵は時折空想と重なる。そこにすずさんの物語が加わると、どこからどこまでが現実かあいまいになってしまう。

だからこそあのシーンはとりわけ残酷だ。


呉、そして広島。二つの都市を襲ったこともあまり直接的な描写はない。それでも呉への度重なる空襲は北条家ばかりでなく呉全体を疲弊させるし、穏やかなはずのすずさんをも微妙にゆがめていく。

別れと出会い、戦争らしい悲喜こもごも、生き残ってしまった人たち。
「それでも、ここで、生きていく」という言葉がすべてなのだろう。


売り上げが一定数に到達したら30分の追加映像が製作されるという話だ。
可能ならそこに到達してくれれば、また微力ながら売り上げに貢献したいものである。




最後に折りたたみで一言。
もし松来未祐さんがご存命なら、誰かの声を当てられたのだろうか。

本当に、本当にのんさんは大当たりの声だと思うけど、すずさんあたりを柔らかく演じられたのではないだろうか。
根拠は『トリコロ』のドラマアルバム。たたみんの声がすごく柔らかくていまだに忘れられない。

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