実のところ、不運続きで乗れないのではないかと危ぶんでいたのだが。
まず試乗車が市内に一台しかない。そりゃいいさ。生産が追い付いてない車両だもの、試乗車の割り当ては少なくなろうて。CVTオンリーも受け入れよう。
その一台が所属するのは市内中心部のディーラー。うん、そこにも問題はない。うちが市内のはずれと言うことを除けばな。
問題は試乗に行く時間である。
その一台の試乗車は系列ディーラーを持ち回りで移動しているらしいが、どこにあるかはディーラーで把握していない。かなりのツッコミどころである。
所属するディーラーの情報のみが公開されているためネットでも移動先の情報は出てこない。
予約していけばいいのだろうが何せ基本無休のお仕事持ち(涙)、当日どころか直前じゃなければ予定が立てられないから予約など事実上不可。
じゃあ時間が出来たらディーラーへ直行ともいかない。どこにあるか分からないのに行けるかと。
直前まで予定が立てられないから予約不可なのに、どこにあるかわからないから狙っての来店も不可能。
ハハッ。かなり詰んだ。
最寄りのディーラーが持ち回り先の一つであったことは幸運だった。時間が出来たら店先を通ってみて、S660があれば飛び込む。確率は低くても他に方法がない。
ほんの数日後に捕まえられたのは行幸と言っていいだろう。
改めて眺めてみると小さい、というか低い。トール系でヘビーどころかスーパーヘビークラスの軽自動車が増えていく中で見慣れない低さは、かなり小さく感じさせる。
見た目……うーん、見た目は後で。そっちは少々辛口に行く。
試乗おなしゃーす。
「コースは決めてないんで10分くらいで戻ってきてくださいねー」
うねくった道に行ける時間じゃないな。ちょい乗り決定ー。
まず乗りこむ。ちょと頭をかがめる必要はあったが知恵の輪モードにならず、頭をちょいと前に倒す程度で済んだ。横にクルマが止まっておらずドアを容赦なく全開に出来たおかげだろう。
シート低っ! センタートンネル高っ!
そしてセンタートンネルギリギリまで寄せられたシートのためにシートベルトのバックルを差し込むのに一苦労。分かってるよ体が硬いデヴだってことは。
その後シートを合わせて一息。ゆったりと乗れる運転席ではないものの、運転すると言う点に関してだけ言えば狭くはあるがきつくはない。困る点と言えば左手を8時くらいの高さにする癖があるので、肘がセンタートンネルに当たるくらいか。まともにつかんでないこちらが悪い。
低く座る運転席に合わせたペダルは向こう側に踏み込む感じで動作に違和感なし。スピードメーターはややギミック臭いがFIT3ハイブリッド程のおもちゃ風味を感じず。
中から見ると、左右はともかく上が見辛い。信号見るのに一苦労な予感。
ではエンジンをかけまーす。スタートボタン。あっけない。
頭から突っ込んでたのでバックで出す。意外だったのは後方の視界。ダブルバブルを背負った視界に不利になりそうなデザインながら、少なくとも試乗の間はバックミラーで困ることはなかったと記憶している。
窓を開ける。明らかに後ろから聞こえるエンジン音はいいんだけど、あまり音質にそそられない。ああ鳴ってるなぁと確認できても心は躍らない。
久しぶりのCVTに悪夢が蘇る(笑)
唯一所有したAT車がCVTで、低燃費をうたったエンジンながら4WDが足を引っ張ったのか燃費が最悪だった。冬にリッター6.5kmとカタログ燃費の約1/3という呆れた数字を叩き出され、燃料警告灯が壊れて点灯したかと思ったくらいだ。
実際このCVTにもやはりいい感触は得られなかった。アクセルを話しても下り坂でなんとなく加速されるのは嫌。せめて速度キープでお願いします。
じゃあパドルで仮想段を動かしても、ちょっと置いておくとすぐオートに復帰する。結局エンジンブレーキはあまり有効にならず、図らずも私のCVT嫌いを加速させただけに終わる。
小さいだけに取り回しは悪くない。しかし、足回りのセットの関係か車体の関係か、荒れた路面での足さばきに不満が出た。もう少ししなやかにならんかなーと。
各種電子制御に関してはそこまで試すに至らず。というかそこまでドライバーの無茶を車両で吸収する必要があるのかと問いたい。
さて。降車して改めて外装デザインを見る。
この外回り、見れば見るほど現代版ビートである。
ビートにソリッドウィングフェースを加えるとこうなる、というラインからほとんど外に出ていないように見えるのだ。唯一新規に持ってきたのはリアのダブルバブルトランクくらいか。
頑張っているのは確かだが惜しい。
ソリッドウィングフェース以外を新規に起こして「これぞホンダが提唱する次世代のコンパクトスポーツでござい」とやってほしかったのだ。
ビートに縛られたくなかったから名前を変えたのではなかったのか。それともミッドシップスポーツならどう作ってもビートのラインから抜け出せないということなのか。
それとも乗ってしまえば外装は気にならないだろうっていう魂胆?
でも結論としては欲しい車の一つになるんだよなぁ。
理由は簡単。徹底した遊びグルマだからだ。
実用性はない。トランクには幌程度しか入らず、オープンエアの楽しみかいくばくかの荷物の二択しか出来ない車でいったい何をする?
遊ぶしかあるまい。それも、移動そのものを楽しむ遊びだ。
運転手くらいしか楽しくないだろうがそういう遊びだって正解だろう。
出先で遊ぶ道具を積んで現地で遊んで往復して、あげくに移動は苦行です同乗者は往復寝るから静かに走らせてください運転手だけ疲弊して苦労しましょう通り一遍の感謝しかしませんけど。
ごめん、前世でどんな悪行詰んだら休日をそんな艱難辛苦で潰される必要に迫られるの?
そもそも現地で道具がいるレジャーとか趣味にしてないけど、私は遠慮させていただきたい。
どうせなら移動も楽しみたい。ならばS660のような選択肢も十分ありだ。
移動も楽しみ、現地で遊び、楽しかったと戻ってくる。これが正しい『モノより思い出』の車使いだと思うのだがいかがだろう。
もちろん道具の必要な遊びを否定するつもりはない。そのために大型車が必要で所有するなら結構なことだ。そういう車でしか出来ない遊びもあるだろう。
積載領域のある大きな車ならいろいろな道具を積んでいける。楽しみも増える。
だが世の中にはフェラーリF40でキャンプに行く猛者もいるし、ポルシェでクリスマスツリーを運ぶ猛者もいる。何ならAZ-1やカプチーノに自転車を積載する猛者もいる。AZ-1の車内にモンキー乗っけた話も見た覚えがあるが発見できず。
自転車やバイクでキャンプに行くのは普通なんだから、積載量の多さが楽しみの多さと直結しないことは確実だと思う。
S660でしか出来ない楽しみも当然ある。そこは否定させないよ。
そして私は、大きな車よりS660を選ぶつもりだ。
そして同じような軽オープンとして比較の槍玉に上がるであろうコペンとの比較だけど、個人的にはS660に軍配を上げたい。
コペンの特徴であるハードトップ、その強度を出すための屋根のカーブが搭乗領域を狭めるのが気になるからだ。
実用度? たぶんどっちも同じくらいないよ。
強いて言うなら冬道でまだ大丈夫そうなのはFFのコペンの方だろうが、雪国でオープンカーオンリーでしのぐ勇者は少ないはず。だったらS660を選びたい。
え? 予算? 一台目の維持も厳しいのに予算なんかあるもんかっ!!(血涙)
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