2015年6月1日月曜日

コーポレート・アイテンディティが破壊するもの

デザインや特性をメーカーで統一して自企業の独自性を強めるコーポレート・アイテンディティという動きがある。

例えば家電メーカーの同一部門で上位機種から下位機種まで可能な限り使い勝手を統一できれば、慣れ親しんだ操作感を捨ててまでメーカーを鞍替えするハードルは上がる。囲い込み戦略としても悪い考えではない。
何より一回デザインしてしまえばその後が楽になる。そりゃ機種ごとの作り替えは必要だろうが、一からデザインの再検討を行うより安く早く楽になるだろう。そういう目論見がないとは言わせないぜ?

もちろん自動車にもコーポレート・アイデンティティの流れは確実にある。

昔はライト程度の手直し程度で名前を変更し、ディーラーの販売チャンネルごとに車両を提供するような無茶を行っていた。しかもそれが普通のこととまかり通り、利益を上げていた狂気の時代があったのだ。
一番有名なのはハチロクのレビン/トレノ兄弟だろうが、今考えるとあの手間のかけっぷりは何かタガが外れたかと思う。リトラクタブルライトの3ドアハッチバックと固定ライトの2ドアセダンが兄弟車種って何かおかしいわな。
マークⅡやらターセルあたりの三兄弟とか知ってるのはすでにおっさんくらい。

乱売が終焉したのはバブル以降。
面白いくらいにあぶくは弾けたが、販売計画が数年単位で組まれる自動車メーカーはその爆発に律儀に全身飲み込まれた。
世間は不景気で、高級車(笑)な時代に仕上がってくるのはバブルに乗っかったお財布事情にそぐわない無駄な贅沢を施した車ばかり。バブルに踊って増やせば増やしただけ売れた販売チャンネルは、自動車メーカーの赤字をチャンネル分倍増してくれた。
チャンネルの維持すら難しくなったのに兄弟車なんかわざわざ用意していられない。同一メーカー内でバッジだけ張り替えて名前の違う別車種でござい、なんていうタワゴトはコストが許さなくなってしまったのだ。
チャンネルの統合、車種の統一、パーツの買い叩きや海外開発もしくは海外調達によるコストダウンを経て更に進められるコスト低減策の一つがコーポレート・アイデンティティという名目によるデザインの統一である。


と仰々しく話をぶっ立ててみたが、自動車業界においてのコーポレート・アイデンティティは近年まで成功例に乏しかった。

例えば三菱自動車がダイムラーからオリビエ・ブーレイを招聘した時に作った通称ブーレイ顔は、マイナーチェンジで採用したものはデザインのちぐはぐさが目につき、任期が2年と短かったこともあって一からデザイン出来た車種も少なかったことがブーレイ顔の評価の低さの理由だろう。折れ線の入ったボンネットなどの影響は残したが。

ちなみにこのあたり、クーペフィアットのメインデザインを手がけ、フィアット・バルケッタのデザインにもかかわった後、移籍したBMWで伝統を壊すようなデザインを行って古参のマニアから批判を受けながらも、セダンやクーペのトランクリッドを一段盛り上がらせるデザインで数多いフォロワーを生み出したクリス・バングルに近いが、効果が劣る。

後追いのない失敗例ならスバルだろう。
数々のコーポレート・アイデンティティを作り出そうとしながらも、評価が得られなかったためにモデルチェンジのたびに旧来の物を捨てて新しいコーポレート・アイデンティティに挑戦していく様は涙を誘う。しかもどんどんデザインが煩雑にダサく

こほん。


レクサスのスピンドルグリルも一代限りで消える。いまだ各メーカーで模索は続くようである。
ぶっちゃけザブングル加藤の表情ネタとかぶって見えてしまい、自分の中でレクサスは「悔しいフェイス!」だったりするんだが。

こほん。


自動車でのコーポレート・アイデンティティの成功例として挙げるなら、マツダの鼓動デザインだろう。
アテンザに迫るマイナーチェンジでも継承するらしい。実際キャラクターといい収まりといいうまいこといっているように感じているので、熟成していければと思う。


しかし、ホンダのソリッド・ウィング・フェースにはひとつだけ物申したい。
採用車種は選べと。


フィット3以降のホンダは一部車種を除きソリッド・ウィング・フェースによるコーポレート・アイデンティティを採用している。
下はS660から、上は……新型NSXまで。

ちょっと待てよ。
NSXだろ? ホンダどころか日本が誇れるスーパースポーツの一角だろ?
歯を食いしばってでも「これがあのNSXの後継だ」と言える、所有する愉悦を確認できるデザインをすべきだろう。

NSXがコーポレート・アイデンティティを採用したからといってS660がプレミアム軽になったりフィット3がプレミアムコンパクトになるわけではない。
むしろ逆で、既に街中に氾濫した見た目のスーパースポーツというのは安っぽく見られるのではないだろうか。

マーチの顔をしたGT-Rに誰か乗りたいか、という話だと思う。



ここで成功例として挙げたマツダの鼓動デザインに話を戻したい。

コーポレート・アイデンティティとして成功していながら、近来の車種であえて鼓動デザインのラインから外した車をリリースしてきた。

それが四代目ロードスターであるところに、マツダのデザインに対する考え方と車種に対するプレミアム感の付け方に賞賛を送りたい。






でも四代目ロードスター、歴代で一番ヘッドライトに可愛げを感じないんだよなー(苦笑)
あんなやぶにらみライトではなく、もうちょっと愛嬌のあるヘッドライトに出来なかったものか。

それとも現物を見たら印象が変わるのかな。

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