彼は長年の戦いで疲れ切っていた。
ヒーリングファクターはうまく機能せず、ガタが来つつある足を少し引きずるように歩き、爪は出し入れがうまく行かず時折引っ張り出す必要にかられ、そのたびに出来る傷は膿み、御自慢の知覚能力も衰えていて手元を見るのに眼鏡が必須だ。
2029年。自然発生しなくなったミュータントは減る一方で、わずか数名を残すのみ。
かつて最強のミュータントの一人と言われたジェームズ・ローガン――ウルヴァリンは、彼に似た能力を持つ少女ローラを連れて、病に侵されたチャールズ・エグゼビア――プロフェッサーXとともに北へ向かう。
自身の活躍が虚構とともに記されたコミックに載る座標は、ローラを連れていくよう依頼された目的地と同じ座標だった。辿り着くその先に『エデンは有るか?』
紆余曲折あったヒュー・ジャックマンによるウルヴァリンシリーズのオオトリになるのがこの映画である。
が、冒頭で見るウルヴァリンが一般人に遅れを取るほど衰えた姿は相当にショックだろうと思われる。
神さえぶん殴ってみせるハルクのストッパー役としてデビューしたウルヴァリンが一般人に遅れを取る姿は少なくとも自分には衝撃だった。
ローガンがウルヴァリンとなる過程を描いたゼロでは拠点となる基地がまだなく、日本で外道と戦うサムライでは基地が遠いこともあって移動が基本。
老いたウルヴァリンが、同じく老いたプロフェッサーと共にローラを連れて目的地へ移動するロードムービー仕立てなのはウルヴァリンシリーズに共通するシチュエーションだが、漂う悲壮感は格段に違う。戻れる基地もなく、行くべき場所には虚構が重なっていて明るい未来とも言えない。それでもローラは向かえと言い、ウルヴァリンは消極的ながらも向かうと決めた。
そして、この映画は徹頭徹尾ウルヴァリンのものである。彼が何を選び、どこへたどり着くのか。プロフェッサーXの選んだ行く末とともに、できれば劇場で見てほしいと思う。
ゼロといいサムライといいどっかこっかで文句つけたくなる出来だったこれまでとは一線を画す大団円だから。